弊所の代表行政書士は美容専門学校にて関連法規の講義を担当していた経験があります。
美容院(ヘアサロン)やまつげエクステ・眉サロン(アイサロン)を開設するために必要な美容所の許可に関する法規だけでなく、ヘアサロン業界の最新動向にも精通しているため、実践的なコンサルティングが可能です。
美しいまつ毛を演出する「まつ毛エクステンション」。近年、その人気は高まり続け、多くの方がサロン開業を検討されています。しかし、まつ毛エクステは単なる美容サービスではありません。法律上は「美容師法に基づく美容行為」として厳格に規制されており、適切な許認可なしに営業することは違法行為となります。
このガイドでは、まつ毛エクステサロンを適法に開業するために必要な法的要件、手続き、そして周辺サービスとの組み合わせ時の注意点について、行政書士の視点から詳しく解説いたします。「知らなかった」では済まされない法的リスクを避け、安心してサロン経営をスタートしていただくための実践的な内容となっています。
まつエクは「美容行為」
なぜ美容師法が適用されるのか
まつ毛エクステンションが美容師法の規制を受けるか否かについては疑義がありましたが、平成20年に厚生労働省が通知を発出しました。それまで法的位置づけが曖昧だったまつ毛エクステについて、「まつ毛エクステンションによる危害防止の徹底について」(健衛発第0307001号)という通知により、明確に美容師法第2条に規定される「美容」に該当するとの法解釈が示されております。
美容師法第2条では、「美容」を「パーマネントウエーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすること」と定義しています。まつ毛エクステンションは、人工毛を自まつ毛に接着することで目元の印象を美しく見せる行為であることから、この定義に該当するというのが厚生労働省の判断です。
美容師法第2条第1項の規定において、美容とはパーマネントウエーブ、結髪、化粧等の方法により容姿を美しくすることをいうとされており、通常首から上の容姿を美しくすることと解されているところである。ここでいう「首から上の容姿を美しくする」ために用いられる方法は、美容技術の進歩や利用者の嗜好により様々に変化するため、個々の営業方法や施術の実態に照らして、それに該当するか否かを判断すべきであるが、いわゆるまつ毛エクステンションについては、①「パーマネント・ウエーブ用剤の目的外使用について」(平成16年9月8日健衛発第0908001号厚生労働省健康局生活衛生課長通知)において、まつ毛に係る施術を美容行為と位置付けた上で適正な実施の確保を図ることとしていること、②「美容師法の疑義について」(平成15年7月30日大健福第1922号大阪市健康福祉局健康推進部長照会に対する平成15年10月2日健衛発第1002001号厚生労働省健康局生活衛生課長回答)において、いわゆるエクステンションは美容師法にいう美容に該当するとされていることから、当該行為は美容師法に基づく美容に該当するものであることを申し添える。
平成20年3月7日健衛発第0307001号厚生労働省健康局生活衛生課長通知
この法的位置づけの整理により、まつ毛エクステンションの施術を行うには美容師免許が必須となり、施術を行う場所も美容所として登録する必要が生まれました。これは、消費者の安全を守るための重要な規制でもあります。実際に、無資格者による施術で目のトラブルが多発していたことが、この規制強化の背景にあります。
まつ毛エクステンション(まつエク)は接着剤等の化学物質を目の近くで使う施術です。そのため、安全性および衛生面に十分な配慮がないと、目等に大きな負担を伴い健康被害が発生するおそれがあります。
したがって、厚生労働省の見解によると、まつ毛エクステンション(まつエク)は美容師法に基づく美容行為に該当します。よって、まつ毛エクステンション(まつエク)は美容所内(アイサロン)で美容師資格をもったアイリストによる施術が必要となります。

まつエクは、
・美容師による施術が必要
・美容所(美容室)内での施術が必要=まつエクサロンは「美容所届出」が必要
美容師法違反のリスク
美容師法に違反した場合のペナルティは決して軽くありません。無免許で美容行為を行った場合、美容師法第17条により30万円以下の罰金が科せられます。また、美容所の登録を行わずに営業した場合も同様の罰則があります。
さらに深刻なのは、法的責任だけでなく、施術による事故が発生した場合の民事責任です。適切な資格と許可なしに営業していた場合、保険適用が困難になったり、損害賠償責任が重くなったりする可能性があります。お客様の大切な目元を扱う以上、このようなリスクは絶対に避けなければなりません。
必要な許可・届出
まつ毛エクステサロン・眉サロン(アイサロン)の開業には以下の条件をクリアーする必要があります。
- 美容所としてのアイサロンの開設
- 美容師資格を持ったアイリストによる施術
美容所登録とは
美容所登録は、美容師法第11条に基づき、美容業を営む施設について保健所に届け出て許可を受ける制度です。この登録なしに美容業を営むことは違法であり、罰則の対象となります。
美容所として認められるためには、厳格な施設基準をクリアする必要があります。これらの基準は、お客様の安全と衛生環境の確保を目的として設けられており、決して形式的なものではありません。実際の検査では、保健所の担当者が現地を訪問し、基準適合を厳しくチェックします。
美容師の確保
美容師の免許を取得していない方は美容を業とすることはできません。厚生労働省の見解では、まつ毛エクステや眉毛エクステ(眉エクステ)は美容師法上の「美容行為」に該当します。
したがって、まつ毛エクステおよび眉毛エクステ(眉エクステ)は美容師でなければ施術できません。まつ毛エクステサロン・眉サロン(アイサロン)開業には、美容師免許を持ったアイリストを確保してください。
管理美容師が必要な場合もあり
なお、美容師である従業者(アイリスト)の数が常時2人以上である美容所(アイサロン)の開設者は、当該美容所を衛生的に管理させるため、美容所ごとに、管理美容師を置かなければならないとされています。
つまり、美容師資格を持ったアイリストが1人で営業する場合以外は、管理者として管理美容師アイリストが必要です。
アイリストの数が常時2人以上であるアイサロンの開設者は、当該美容所を衛生的に管理させるため、美容所ごとに、管理美容師を置かなければならない。
美容所の開設(美容所登録)手続
美容所登録の手続きの流れ
管轄保健所で施設基準の詳細を確認します。自治体により基準に微細な違いがあるため、この段階での相談は極めて重要です。物件選定前に相談することで、後から「基準に合わない」という事態を避けることができます。
美容所基準を満たす設計を行います。まつエクサロンは一般的な店舗設計とは異なる要件があるため、美容所の設計経験がある業者を選ぶことをお勧めします。弊所では、まつエクサロンの実績が多いリフォーム業者の紹介も可能です。
必要書類を準備して保健所に提出します。書類不備があると手続きが遅れるため、事前に必要書類リストを確認し、漏れがないよう注意が必要です。証明書や医師の診断書などは取得に時間がかかるので、書類準備のスケジュールに注意が必要です。
保健所の担当者が実際に現地を訪問し、施設基準への適合を確認します。この検査に合格しなければ営業できません。
お急ぎの場合には、2週間程度で対応することも可能です。御相談ください。
美容所の開設には様々な条件があります。詳しくは美容所と理容所登録に関するページを御覧ください。通常の美容院と同等の設備が必要となるのが原則です。
参考:美容所・理容所の開設に必要は手続きとは?行政書士が解説します
しかし、カット・ブローやカラーリングを行う一般の美容室では業務上必須な設備であっても、まつ毛エクステサロン(アイサロン)では業務上不要な設備もあります。そのような設備に関しては、規定で要求される最低限の設備を備えれば足ります。 例)洗髪台
また、プライベートサロンなどの完全予約制サロンの場合には、「待合」スペースを省略して広々とした空間のサロンを作ることも可能です。
構造設備基準は自治体によって異なる
美容所の構造設備基準は自治体の条例によって異なります。したがって、まつ毛エクステサロン(アイサロン)を開業しようとする地域の条例を詳しく調査する必要があります。
開業時のコストを最小限に抑えるためには、アイサロン開業予定場所の条例を詳しく調べ、法的に必要な最小限度の設備をピックアップする必要があります。
自宅サロンの特別な注意点
近年、自宅でサロンを開業する方が増えていますが、自宅であっても美容所基準は同様に適用されます。住宅兼用の場合でも、美容所として使用する部分は完全に居住部分と区分する必要があります。
自宅サロンの場合、特に注意が必要なのは近隣への配慮です。住宅地でのサロン営業は、騒音や来客による近隣トラブルの原因となる可能性があります。開業前に、建物の管理規約や地域の用途制限を確認し、必要に応じて近隣への説明を行うことが重要です。
また、住宅ローンを利用している場合、事業用途での使用について金融機関への確認が必要な場合があります。無断で事業用途に変更することは契約違反となる可能性があるため、事前の相談をお勧めします。
手続きの代理人は特定行政書士に依頼しましょう
弊所は行政書士事務所のため、アイサロン開業予定のアイリスト代理人として届け出の手続きを代理することが可能です(行政書士資格を持たないコンサルティング会社は届出書作成手続きを代理すると違法です)。弊所代表の特定行政書士は美容専門学校で関連法規の講義を担当した経験があり、美容・理容に関する法令に精通しています。また、親族に美容師や美容所経営者が多数おり美容所経営にも精通しています。
まつエクサロンを検討されている方は、美容所開設やアイサロン開業のノウハウが豊富な弊所へぜひ御相談ください。
例えば、理容所または美容所を開設する場合に、洗髪専用の設備を設けることが義務づけられる自治体が増えています。この場合には、洗髪作業をしない場合でも洗髪設備を設置することとされています。ただし、まつ毛エクステ専門や眉サロンやヘアメイク専門のサロンであって、頭髪に係る作業を一切しない場合には洗髪設備を設けなくても許可を取得できるケースもあります(例:渋谷区、港区など)。
必要のない設備を設置して無駄なコストを払わないためにも、当該自治体の条例や要項を熟知した上でサロンのビジネスモデルを具体化し、保健所と事前協議をすることが重要です。
無資格の「コンサルティング会社」や「リフォーム会社」が保健所提出書類を作成するのは法律違反です。
エステサロン + まつ毛エクステの複合営業について
複合営業は法的に複雑
エステサロンでまつ毛エクステサービスを追加する場合、法的な要件が複雑になります。エステティック単体であれば特別な許認可が不要な場合もありますが、まつ毛エクステを加えた瞬間に美容師法の規制対象となり、サロン全体が美容所基準を満たす必要が生じます。
この変化を理解せずに営業を開始することは非常に危険です。「エステの延長線上のサービス」という認識は法的に通用しません。お客様から見れば同じサロンで提供されるサービスでも、法的には全く異なる規制下に置かれることになります。
適法な複合営業の実現方法
エステとまつ毛エクステの複合営業を適法に行うには、以下の対応が必要です。
美容所登録の取得が大前提となります。既存のエステサロンであっても、まつ毛エクステサービスを開始する前に美容所としての基準を満たし、保健所の許可を得る必要があります。これには、施設の改装が必要になる場合もあります。
美容師免許保有者の確保も不可欠です。まつ毛エクステの施術を行うスタッフは全員が美容師免許を持っている必要があります。エステティシャンの経験がどれほど豊富でも、美容師免許なしにまつ毛エクステを行うことは違法行為となります。
サービス提供区別の明確化も重要なポイントです。同一施設内でエステとまつ毛エクステを提供する場合でも、それぞれのサービス内容と料金を明確に区分し、お客様に分かりやすく説明する必要があります。
よくある違法営業パターンと対策
実際のサロン運営において、知らず知らずのうちに違法状態に陥ってしまうケースがあります。以下のようなパターンは特に注意が必要です。
「まつ毛美容液塗布」名目での施術:まつ毛美容液を塗布するという名目で、実質的にエクステンションを行うケースです。名称がどうであれ、人工毛を接着する行為は美容師法の規制対象となります。
「まつ毛カウンセリング」での施術:カウンセリングやアドバイスという名目で、実際には施術を行うケースです。お客様への説明と実際の行為が異なることは、消費者保護の観点からも問題があります。
無資格スタッフによる「補助」:美容師が施術の一部を行い、無資格スタッフが「補助」として残りの作業を行うケースです。美容行為はその全工程において美容師が行う必要があり、無資格者が施術に関与することは認められません。
これらの違法営業を避けるためには、サービス内容の明確な定義と、適切な資格保有者による施術の徹底が不可欠です。
まつ毛カール・まつ毛パーマの取扱い
まつ毛カール・パーマの法的位置づけ
まつ毛カールやまつ毛パーマも、まつ毛エクステンションと同様に美容師法の規制対象となります。これらの施術は、化学薬品を使用してまつ毛の形状を変化させる行為であり、美容師法第2条の「美容」に該当するという解釈です。
特にまつ毛パーマは、パーマネントウエーブの一種として明確に美容行為とされています。使用する薬剤の安全性、適切な施術手順、アフターケアなどについて、専門的な知識と技術が求められます。
まつ毛パーマ特有の注意点
まつ毛パーマは、化学薬品を目元という極めてデリケートな部位に使用する施術です。そのため、通常のパーマ以上に慎重な取扱いが要求されます。
薬剤の選択と管理が最も重要です。目元に使用する薬剤は、頭髪用とは異なる安全基準が適用されます。また、薬剤の保管方法、使用期限の管理、廃棄方法についても適切な知識が必要です。
施術前のカウンセリングでは、お客様のアレルギー歴、過去の目元トラブル、使用中の化粧品やコンタクトレンズの有無などを詳細に確認する必要があります。これらの情報を適切に把握せずに施術を行うことは、重大な事故につながる可能性があります。
アフターケアの指導も欠かせません。施術後の目元の状態変化、異常が生じた場合の対応方法、日常的なケア方法などについて、お客様に適切な指導を行う必要があります。
眉カット、眉毛パーマ、眉エクステの施術は「美容行為」
眉毛は顔の印象を大きく左右する重要なパーツとして、近年その重要性がますます注目されています。眉毛エクステンション、眉毛パーマ、アイブロウワックスなど、眉毛に関する美容サービスの需要は急速に拡大しており、多くの事業者がこれらのサービス提供を検討しています。
しかし、眉毛に関する施術は、使用する技術や施術内容によって、美容師法と理容師法という異なる法的規制の対象となる複雑な分野です。まつ毛エクステと同様に、適切な資格と許認可なしに営業することは法律違反となり、重大な法的リスクを伴います。
この項目では、眉毛関連サービスの各施術について、法的位置づけ、必要な資格・許認可、そしてまつ毛エクステサロンとの複合営業時の注意点について、行政書士の視点から詳しく解説いたします。

眉毛エクステ(眉エクステ)は、
・美容師or理容師による施術が必要
・美容所(美容室)or理容所(床屋)内での施術が必要
施術内容による法的区分
眉毛に関する施術は、使用する技術と目的により、美容師法と理容師法のいずれかの規制対象となります。この区分を正確に理解することが、適法な営業の前提となります。
施術カテゴリ | 主な施術 | 適用法令 | 必要資格 |
---|---|---|---|
美容行為 | 眉エクステ、眉パーマ、眉カット | 美容師法 | 美容師免許 |
理容行為 | 眉シェービング、顔剃り | 理容師法 | 理容師免許 |
無資格施術 | 眉ワックス(脱毛のみ) | なし | 特別資格不要 |
美容師法と理容師法の基本的違い
美容師法における「美容」とは「パーマネントウェーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすること」と定義されています。一方、理容師法における「理容」とは「頭髪の刈込、顔そり等の方法により容姿を整えること」と定義されています。
この違いは単なる文言の差ではなく、実際の施術内容と使用できる器具に大きな影響を与えます。「美しくする」ことを目的とする美容師と、「整える」ことを目的とする理容師という基本的な役割分担が法的規制の根拠となっています。
この法律で「美容」とは、パーマネントウエーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすることをいう。
美容師法第二条
この法律で理容とは、頭髪の刈込、顔そり等の方法により、容姿を整えることをいう。
理容師法第一条の二
眉毛エクステンション(眉エクステ)
眉毛エクステンションは、まつ毛エクステンションと同様に美容師法第2条の「美容」に該当する行為です。人工毛を眉毛に接着することで容姿を美しくする行為であることから、美容師法の規制対象となります。
まつ毛エクステンションと同様に、眉毛エクステンションも美容行為に含まれるため、施術を行うには美容師免許が必須です。
要件項目 | 詳細 | 根拠法令 |
---|---|---|
施術者資格 | 美容師免許(国家資格) | 美容師法第6条 |
施設登録 | 美容所登録 | 美容師法第11条 |
管理者配置 | 管理美容師(従業員2名以上時) | 美容師法第12条の2 |
眉毛パーマ(ブロウラミネーション)
眉毛パーマ(アイブロウスタイリング、ハリウッドブロウリフト)は、眉毛の毛流れ矯正をする施術です。化学薬剤を使用して毛髪の構造を変化させる行為であることから、美容師法第2条の「美容」に該当します。
眉毛パーマは顔面という極めてデリケートな部位に化学薬剤を使用するため、頭髪のパーマ以上に慎重な取扱いが要求されます。
要件項目 | 詳細 | 根拠法令 |
---|---|---|
施術者資格 | 美容師免許(国家資格) | 美容師法第6条 |
施設登録 | 美容所登録 | 美容師法第11条 |
管理者配置 | 管理美容師(従業員2名以上時) | 美容師法第12条の2 |
眉毛カット・眉毛ワックス
美容師が実施可能な眉毛施術
美容師ができることは、ハサミやトリマーを使った眉カット、毛抜き(ツイザー)による形調整、眉メイクやアイブロウデザインです。これらの施術は美容師免許があれば適法に実施できます。
眉毛カット では、ハサミやトリマー(電動バリカン)を使用して眉毛の長さを調整し、形を整えます。これは美容師法の範囲内で実施可能な施術です。
眉毛ワックス脱毛 については、一般的には特別な国家資格は不要とされていますが、安全な施術のためには専門的な知識と技術が必要です。
理容師のみが実施可能な施術
理容師ができることは、カミソリを使ったシェービング(顔そり)、眉毛の形を整える眉シェービング、産毛処理(お顔全体のシェービング)です。
美容師はカミソリを使った施術はできませんが、ハサミやトリマーを使った眉カットなら可能です。この区分は美容師法により厳格に定められています。
化粧に附随した軽い程度の「顔そり」は化粧の一部として美容師がこれを行ってもさしつかえないとされていますが、これは非常に限定的な範囲です。
